植物の採集活動と採集林
科学研究費補助金 基盤B 日本列島における採集林の成立要因と変遷に関する地理学的研究
A Geographical Research on Development and Changes of Gathering Forests in Japan Islands
研究概要
■競争的資金
科学研究費補助金 基盤B
タイトル:日本列島における採集林の成立要因と変遷に関する地理学的研究
(代表:藤岡悠一郎、2020~2023年度)
■採集林とは…
植物資源(トチノミ、トチノキ、ドングリ、野イチゴ、ヤマモモなど)を採集するための場として、人々に利用されてきた植生(森林)、および人々の採集活動にともなって成立・維持されてきた人為植生を総称して“採集林”と呼んでいます。
■本共同研究の目的
生物多様性ホットスポットの一角を成す日本列島において、かつて生態系に組み込まれていた人々の生業・生活様式が過疎化・高齢化などにともなって大きく変容する中で、これからの人為生態系の活用策や生物多様性保全策を検討していく必要があります。
多様な人為生態系が存在する日本列島で、これまで体系的に整理されなかった“採集林”という概念を構築し、それを日本植生誌の中に位置付け、生物多様性上の意義や文化的な意味を整理することが一つの鍵となります。
本共同研究は、島嶼部(とうしょぶ)を含む日本列島における人為生態系を採集林という観点から整理し、地理学や人類学、考古学、リモートセンシングなどの異分野の協働による現地調査およびドローン空撮などの新技術から、典型的な採集林の分布様式と成立メカニズムを解明します。
これによって、採集林という植生の文化的・歴史的な意味づけを行うことが可能となり、無秩序な伐採や放棄が進む採集林の再活用策や多様性保全策に繋げていくことが期待できます。
■研究計画
本研究では、専門分野の異なる共同研究者でチームを組み、次の4つのテーマに沿って研究を進める計画です。
前半は、採集林の発達が顕著な場所を集中調査地として設定し、採集林研究のモデルケースを作ることを目指します。
<テーマ1:植物利用・生業>
住民や行政関係者などを対象としたインタビュー調査・アンケート調査を実施し、地域の生業や資源利用に関する文化および社会制度を明らかにしていきます。
<テーマ2:植生構造>
採集林で毎木調査、地形測量、土壌調査等を実施し、植生構造と環境条件を明らかにしていきます。
<テーマ3:植生分布>
採集林を対象にドローンとマルチスペクトルカメラ等を用いて個木のマッピングを行います。
<テーマ4:植物利用史(植物考古学)>
採集林の立地地域に分布する考古遺跡を対象に出土遺物を分析し、過去の生業や植物利用の変遷を明らかにしていきます。
これらの情報を研究会等で総合的に議論し、日本列島の採集林の分布や成立に関するモデルを構築します。
さらに、採集林の将来的な活用方法や生物多様性保全策を各地の行政関係者や保全団体と議論し、研究成果の活用を試みていく計画です。
■現地調査計画
新型コロナ感染状況を踏まえて、現地調査を実施していく予定です。
■研究成果
本研究に関するこれまでの著書、論文、発表などはこちらからご覧ください。
■関連プロジェクト
「トチノキ巨木林の分布と成立要因に関する地理学的研究:文化景観としての評価に向けて」
(代表:藤岡悠一郎,2018年~2021年)